2025年07月02日
(転載)日本予防医学協会
健康づくりWEBかわら版 2025年7月号より
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子宮頸がんのQ&A
~検診やワクチンで子宮頸がんを予防しよう~
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みなさんはがん検診を定期的に受診していますか?
日本における死因の1位はがんで、約2人に1人はがんになると
いわれています。
そこで今回は、検診による早期発見・治療で死亡率が低下すると
証明されているがんの一つに関するお話です。
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★ 子宮頸がんとは ★
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子宮は赤ちゃんを育てる子宮体部と、出産のときに産道の一部に
なる子宮頸部に分けられます。この子宮頸部に発生するがんを子
宮頸がんと言います。日本では、毎年約1万人の女性が子宮頸が
んにかかり、約3,000人の方が亡くなっています。
●なりやすい年齢は?
30~40代がピークで比較的若い世代に多いです。20代後半から増
加し、50代以降の発症も少なくはありません。
●原因は?
①ヒトパピローマウイルス(HPV)
子宮頸がんは95%以上がHPVの長期間の感染が原因とされてい
ます。HPVは性的な接触によって男性にも女性にも感染する
ウイルスで、性交渉の経験がある女性の50~80%が一生に一度は
感染するといわれています。
②生活習慣
子宮頸がん発症の要因として、喫煙や飲酒、肥満も挙げられてい
ます。生活習慣の見直しも子宮頸がんの予防には重要であるとい
えます。
●HPVに感染したら?
HPVに感染した場合、多くは2年以内に自然治癒し、問題ない
ことがほとんどです。一方で、感染が長期間持続し、自然治癒し
なかった一部の方が『異形成』と呼ばれる前がん病変を経て、数
年~数十年かけて子宮頸がんへ進行すると考えられています。
異形成やがんのごく初期で発見できれば、早期治療で完治する可
能性が高く、手術による身体の負担も軽減されます。その場合、
妊娠・出産も望めますし、手術による合併症も少ないため、その
後の生活に大きく影響することが考えられます。
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★子宮頸がん検診で早期発見★
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現在、一般的に行われる子宮頸がん検診は『細胞診』ですが、日
本の子宮頸がん検診受診率は約30%であり、欧米諸国が70~80%
であることと比較するとまだまだ少ないといえます。
●検診の頻度は?
現在、厚生労働省により20歳代では2年に1回の細胞診、30歳以
上では2年に1回の細胞診または5年に1回のHPV検査(※)
が推奨されています。しかし、これは異常がなかった場合であり、
一度でも異常を指摘された場合は産婦人科医の指示に従って受診
してください。
●痛みはある?
性交渉の経験がない方は、検査に痛みを伴うことがありますが、
使用する器具のサイズの調整や潤滑剤の使用で痛みを軽減できま
す。検診を受けることでそのほかの婦人科疾患を発見できる場合
もあります。特に月経不順や不正出血、持続する下腹部痛など気
になる症状がある際は、一度、産婦人科への相談をお勧めします。
●何歳まで受けたらいいの?
厚生労働省の指針では、『特に受診を推奨するのは20歳以上69歳
以下』とされています。これは、70歳を超えると子宮頸がんにな
らないという意味ではありません。20歳から69歳まで2年に1回
の検診を受け続けて異常がなかった場合、70歳から10年間はほぼ
子宮頸がんは発症しない、ということに基づいたものです。
69歳までに検診の受診歴が長期間ない方については、子宮頸がん
のリスクがあるので、上記の年齢を超えても受診することが望ま
しいでしょう。
※HPV検査について
HPVの種類は100種類以上存在していますが、がんと関係のある
ハイリスクタイプ(約15種類)に感染しているかどうか、また、
感染しているハイリスクHPVの型が何かを検査します。
細胞診の際に採取した同じ細胞を利用して検査(同時実施)も可
能です。
検査感度が高く、定期健診として導入している自治体もあります。
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★HPVワクチンでの予防★
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現在、日本で接種されているHPVワクチンは2価、4価、9価
の3種類があり、これは予防できるHPVの数を表しています。
最近では、予防できるHPVの数が多い9価の接種が推奨されて
おり、9価ワクチンにより8~9割の子宮頸がんが予防可能とい
われています。
●いつ受ければいいの?
12~16歳の女子は、予防接種法に基づく定期接種として、公費に
よりHPVワクチンを接種することができます。
26歳までに接種をすると、前がん病変の発生が減少することもわ
かっており、早期接種が望ましいとされています。
●効果はどのくらい?
12~16歳にワクチン接種すると、26~30歳まではワクチンの効果
が持続すると考えられています。接種後は抗体が低下するものの、
一定の値を保ち、性交渉により自然感染した場合よりも高い抗体
を維持することがわかっています。
●男性も受けることができるの?
日本では9歳以上の男性が4価のHPVワクチンを接種できます。
男性が接種することにより、子宮頸がんの予防だけでなく、中咽
頭がんや肛門がんなどにかかるリスクも減少することが示されて
います。多くの欧米諸国では公費で接種可能で、接種率80%を超
える地域もあり、HPVの感染や前がん病変の発生が低下してい
ます。一方、日本では、男性への接種が定期接種でないため、費
用は接種者の全額負担がほとんどであり、接種が進まないのが現
状です。
●副作用は大丈夫?
国内でHPVワクチン接種の副作用が疑われたことから接種が控
えられた時期がありました。現在は、世界保健機関(WHO)や
厚生労働省の調査からも、HPVワクチンの安全性に特段の問題
はないとされています。ワクチン接種と検診を組み合わせること
で、より効果的な子宮頸がんの予防が期待できます。今後、接種
を迷っている方は、お近くの産婦人科へご相談ください。
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★ 最後に・・・ ★
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子宮頸がんはワクチン接種で発症を予防でき、検診で前がん病変
を早期発見することでがんへの進行を防ぐことができます。日々
忙しい生活の中でも自分自身のからだに関心をもって、定期的な
検診と適切な医療機関の受診を行いましょう。
婦人科医【Y・I】
参考文献
・日本産科婦人科学会 産科・婦人科の病気 子宮頸がん
https://www.jsog.or.jp/citizen/5713/
【最終閲覧2025年6月8日】
・日本産科婦人科学会 子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために
https://www.jsog.or.jp/citizen/5765/
【最終閲覧2025年6月8日】
・東京都保健医療局 40代、50代、60代の方へ知ってほしい子宮頸がん検診の大切さ
https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/joshikenkobu/column/03/
【最終閲覧2025年6月9日】
・日本婦人科腫瘍学会 HPVワクチンについてQ&A
https://jsgo.or.jp/hpvqa/
【最終閲覧2025年6月9日】
・東京都保健医療局 HPVワクチンの男性への接種について
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/info/hpv/hpvdansei
【最終閲覧2025年6月9日】
以上