健保からのお知らせ
2017/3/1
(健康づくりWEBかわら版2017年3月号)「メンタルヘルス」について
(転載)日本予防医学協会
健康づくりWEBかわら版 2017年3月号より
メンタルヘルスは、あらためて言うまでもなく、個人にも組織に
もとても大切ですね。わたくしたち労働衛生機関にとっても最重
要ポイントのひとつです。
そこで今回は「メンタルヘルス」についてのお話です。
———————————————
★ メンタルヘルスという言葉のイメージ ★
———————————————
メンタルへルスの「そもそも」ですが、メンタルへルスという用
語は「不調」とセットで使われることが多く、一般にポジティブ
なイメージとして捉えられていないように感じます。ふだんの生
活で「メンタルヘルスでね」などと話すときもネガティブな印象
が前提にありませんか? 厚生労働省の『ストレスチェック制度
簡単導入マニュアル』にも「うつなどのメンタルヘルス不調を未
然に防止するための仕組み」※とあり、働く人の健康の保持増進
に結びつくポジティブなイメージに直結しづらいです。
※http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf
———————————————————-
★ 健康診断の集計結果からメンタルへルスを・・・ ★
———————————————————-
日本予防医学協会では毎年100万人以上の方々に健康診断をご受診
いただいています。そのデータを経年で分析して、よりよい健康
診断・保健事業に役立てようと鋭意努力しております。
その一環でメンタルヘルスとの関連が考えられる健診時の質問・問診
項目の推移を集計しました。
2002年から2015年を対象に弊会健診カードの質問・問診項目から
「眠れない」「食欲がない」「特に疲れやすい」「労働時間は9
時間以下である」「毎日の生活に満足している」「ストレスを適
度に感じる」などを集計しました。
———————————————————-
★ 「ストレスを適度に感じる」 ★
———————————————————-
「眠れない」「食欲がない」「特に疲れやすい」は大きな変動が
ありませんでした。2002年から2015年まで、1%前後の違いしか
観察できませんでした。
「労働時間は9時間以下である」も2002年から2015年で大きな変
動はありませんでしたが、男性のみ2009年だけ急激に上昇してい
ました。時間外労働が少ないと答えた方が多かったことになりま
す。グラフ上では2009年を頂点とした山ができています。推測に
過ぎませんが、2008年9月のリーマンショックの影響が翌年に及
んだのかもしれません。労働時間の長さとメンタルへルスには深
い関係があるようですので、今後も経過をみていきたいと思いま
す。
図:「ストレスを適度に感じる」の推移
https://www.jpm1960.org/kawara/images/kawaraban201703_image01.jpg
「毎日の生活に満足している」も全体では大きな変動はありませ
んでした。しかし年代別に比較すると、男女ともに20代・30代は
2002年から20015年で5%以上の上昇が観察されました。一方60
代は大きく減少しています。2002年に60代は男女ともに6割弱の
方が「毎日の生活に満足」と答えていますが(他の年代は20~30
%程度)、2015年には男性は5割弱、女性は4割強まで低下して
います(それでも他の年代よりまだ高い割合です)。
「ストレスを適度に感じる」は男女ともに2002年から2015年で5
%以上の上昇が観察されました(男:39.8→46.8%/女:45.2→
54.0%)。全体としてはストレスを感じる状態は好転しているよ
うです。「ストレスの適度さ」がどのようなものか、基準を明確
にするのは難しいですが、自覚的な健康感として多くの方の平均
値から上昇が観察できました。
———————————————————-
★ メンタルへルスのトレンド ★
———————————————————-
メンタルへルスは「不調」の文脈で語られることが多いですし、
不調者への対応が最優先なことは間違いありませんが、わたくし
たちのデータから全体としては好転している傾向も観察できまし
た。みなさんの実感はいかがでしょうか。
この上向きのトレンドに乗って、メンタルへルスを増進する健康
づくりにも積極的に投資してはいかがでしょうか。ストレスに耐
える力を、ロートとフィルターに例えると、より大きなロートと
高い性能のフィルターを準備するよい時期ととらえるわけです。
図:ストレスに耐える力をロートとフィルタにたとえる
https://www.jpm1960.org/kawara/images/kawaraban201703_image02.jpg
今よりロートが大きくなれば、よいストレスもよくないストレス
も十分に受け止めることができますし、フィルターが高性能なら
よくないストレスを上手に濾過してくれますよね。
個人や組織のメンタルへルスを増進する試みに、チャレンジして
みませんか?!
以 上