健保からのお知らせ

2022/6/1

(健康づくりWEBかわら版2022年6月号) 『噛む力・お口の健康』について

(転載)日本予防医学協会
    健康づくりWEBかわら版 2022年6月号より
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       噛む噛む エブリデー

 

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歯が生えそろっていなかった乳幼児期のことを「あの頃は歯がな
くて難儀だったなぁ」と記憶している方は極めて稀だと思います
ので、歯を失った状態をリアルに実感することはむずかしいです
ね。
普通に噛めていたら、有難みを常々感じることは少ないでしょう
が、お口の健康も失ってから気づくのでは遅すぎます。

そこで今回は『噛む力・お口の健康』に関するお話です。

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★  はるか六〇年前から、今もずっと ★
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わたしたち日本予防医学協会では、創立まもない1963年から「歯
科口腔健診」を開始しています。働く人の健康に、口腔保健は不
可欠だと考えたことは月日を超えて今も繋がっています。

2000年には口腔保健指導「お口のチェック」を開始しました。
ロゴマークは三人の歯科衛生士をモデルにしていて、当時20代、
30代、40代だった職員は、それぞれ40代、50代、60代となり今も
頑張っています。

2011年から2012年は東日本大震災の支援事業として、宮城県南三
陸町で戸別訪問を行い、歯科衛生士による聴き取り及び口腔内観
察、カウンセリングを行いました。

わたしたちは一貫して「噛む力・お口の健康」に取り組み続けて
います。

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★ 食事をかんで食べるときの状態は? ★   
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2018年に法改正があり、特定健診・保健指導の第三期見直しとし
て、問診項目に「食事をかんで食べるときの状態はどれにあては
まりますか」が追加されました。
もうすでに何回かお答えですね。回答選択肢は次の3つです。
①何でもかんで食べることができる
②歯や歯ぐき、かみあわせなど気になる部分があり、かみにくい
 ことがある
③ほとんどかめない

定期健診の中に「噛む力・お口の健康」が加わったことは画期的
なことです。わたしたちは以前から歯科と医科の両方の健診を実
施していましたので、活用しないわけにはいきません。弊会の健
康情報分析課の職員が中心となり外部有識者のお力添えをいただ
き研究論文を2編発表しました。

まずはじめに、特定健診の問診項目「食事をかんで…」と歯科健
診の結果に関連性があるのか調べました※1。
「②かみにくいことがある」や「③ほとんどかめない」と回答し
た人は「①何でもかんで食べることができる」と回答した人と比
較して口腔状態もよくない可能性があり統計的な関連性が確認で
きました。
噛みにくいや噛めないと答えた方は適切な歯科健診の実施や保健
指導へと繋げることが重要です。
この記事をお読みのあなたは、何とお答えでしょうか?

次に、「②かみにくいことがある」や「③ほとんどかめない」と
回答した人は「①何でもかんで食べることができる」と回答した
人と比較して肩こりや腰痛の違いを調べました※2。
こちらも統計的に有意な差があり、特定健診の問診項目「食事を
かんで…」は肩こりや腰痛の発生を予測できる可能性を示してい
ます。肩こりや腰痛は加齢やストレスだけでなく、噛みにくさも
要チェック! ということですね。

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★ 歯科衛生士に聞いた!噛む力がもたらす健康力 ★   
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一般的には、噛む力が低下すると、野菜や果物の摂取量が減少し
脂質の摂取量が増加します。そのことにより、心血管疾患やがん
発症リスクをあげると考えられています。

また、これまで発表されている他機関の研究論文を見ていくと、
次のような結果も報告されています。

・噛む力が高い人に比べて、低い人は2.6倍死亡するリスクが高く
 5.1倍心血管病による死亡リスクが高い。※3

・歯を失うこと、つまり噛めなくなることが、脳への神経伝達物
 質を減らして認知機能の低下につながる。※4

元気でいるためには兎に角『噛む噛む エブリデー』です。

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★ 毎年の健康診断でお口の健康も ★
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「何でもかんで食べることができる」かどうか、何気ない問診項
目の1つですが、ご自身やご家族、または支援の手を差し伸べる
べき人たちに、失う前に気づいてほしいことの一つです。
「噛む噛む エブリデー オールマイライフ」を目指して、「噛
む力・お口の健康」の保持増進に微力ながら邁進して参ります。

 

【引用文献】

※1 谷直道ら「特定健康診査に用いられる主観的な咀嚼状態に
   関する質問項目と男性勤労者における口腔状態の関連性」
   産業衛生学雑誌,2022年2月17日受理
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/advpub/0/advpub_2021-027-B/_pdf/-char/ja

※2 TANI Naomichi et al.,”Does difficulty in chewing induce subjective musculoskeletal symptoms? A case-control study”,BMJ open,2022年2月27日受理
https://bmjopen.bmj.com/content/bmjopen/12/3/e053360.full.pdf

※3 Ansai T, Takata Y, Soh I, Akifusa S, Sogame A, Shimada N, Yoshida A, Hamasaki T, Awano S, Fukuhara M, Takehara T: Relationship between chewing ability and 4-year mortality in a cohort of 80-year-old Japanese people. Oral Dis. 13:214-219, 2007.

※4 Goto T et al. Neurodegeneration of trigeminal mesencephalic neurons by the
  tooth loss triggers the progression of Alzheimer’s disease in 3×Tg-AD model mice
Journal of Alzheimer’s Disease DOI: 10.3233/JAD-200257
                             以 上